初めて猫を迎えたいと思ったとき、多くの人が一度は迷うのが、
- 保護猫を迎えるか?
- ペットショップで子猫を探すか?
という選択ではないでしょうか。
「保護猫って、かわいそうな猫?」「病気や性格に問題があるのでは?」と不安になる初心者さんも少なくありません。しかし、実は保護猫は“いらなくなった命”ではなく、「人ともう一度やり直すチャンスを待っている猫」です。
この記事では、
- 日本の保護猫の現状
- ペットショップとの具体的な違い
- 保護猫を選ぶメリットと、あらかじめ知っておきたい注意点
- 初心者さんが事前に考えておくべきポイント
- 実際の体験談
を専門家(獣医師・動物行動学・保護団体スタッフなど)の知見を調べた結果も交えながら、初心者の方にもわかりやすくお伝えします。
知らなきゃ損!保護猫の基礎知識と日本の現状
年間2万匹以上が保護されている日本の猫たち
環境省の統計では、自治体に収容される猫はここ数年で減少傾向とはいえ、いまだに年間約2万匹以上が保護されています。多くは、
- 野良猫として屋外で生まれた子
- 多頭飼育崩壊(飼い主が世話をしきれなくなった家)からのレスキュー
- 迷子になり行き場を失った元飼い猫
など、人間社会の中で「行き場を失った猫」たちです。
近年はTNR(捕獲・不妊去勢・元の場所に戻す)活動や、保護団体の啓発により殺処分数は大きく減ってきましたが、それでも「新しい家族を待っている保護猫」がたくさんいる現実は変わっていません。
保護猫=「いらなくなった命」ではない
「保護猫って、何か問題がある猫なんじゃないの?」という声もよく聞きます。しかし、実際に保護現場で猫を見ていると、
- 人懐っこくて甘えん坊
- 穏やかで子どもとも暮らしやすい
- 元飼い猫で、基本的なしつけができている
といった子もたくさんいます。
多くの保護団体は、
- 健康診断
- ワクチン接種
- ノミ・ダニ・寄生虫の駆虫
- 避妊・去勢手術(年齢に応じて)
などの初期医療を済ませたうえで譲渡します。つまり、「保護猫=リスクが高い」ではなく、「背景を理解したうえで迎える必要がある猫」なのです。
選ぶ前に必読!ペットショップとの5つの違い
ここからは、初心者さんが特に気になる「ペットショップとの違い」を5つのポイントで整理します。
| 項目 | 保護猫 | ペットショップの猫 |
|---|---|---|
| 出会い方 | レスキュー・譲渡活動を通じて出会う | 商品として店頭で出会う |
| 初期費用 | 1〜3万円前後(医療費込みが多い) | 10〜30万円+医療費など |
| 性格・年齢 | 成猫が多く、性格が安定している | 子猫中心で、性格は未知数な部分も |
| 健康チェック | 団体により血液検査・ワクチン済み | ワクチン済みだが持病が隠れている場合も |
| 迎える手順 | 面談・トライアルなどのプロセスあり | 即日お迎え可能な場合が多い |
【違い①】命の流通ルート|保護猫は「レスキュー」、ショップは「商品」
ペットショップの猫の多くは、ブリーダーによって計画的に繁殖され、市場価値の高い時期(生後2〜3か月頃)に店頭に並びます。そこではどうしても、
- 見た目(品種・毛色・顔立ち)
- 珍しさ
- 価格
といった「商品としての価値」が優先されがちです。
一方、保護猫は、
- 路上や多頭飼育崩壊現場などからのレスキュー
- 飼い主の事情(離婚・転居・病気など)による飼育放棄
- 迷子や遺棄
など、人間社会の影響を受けて行き場を失った命です。そのため、保護団体は「いかにその子に合った家族を探すか」という視点で譲渡活動を行っています。
同じ「猫を迎える」でも、ショップは「買う」行為、保護猫は「引き受けて共に生きる」選択という価値観の違いがあります。
【違い②】費用|保護猫は譲渡費用1〜3万円前後、ショップは10万円以上が一般的
保護猫の譲渡費用は団体によって異なりますが、多くは1〜3万円前後。この中には、
- 初回ワクチン
- 不妊手術費用
- ウイルス検査(猫エイズ・白血病など)
- ノミ・ダニ駆除、検便
などが含まれていることがほとんどです。
一方、ペットショップでは10〜30万円が相場で、そこに
- ワクチン代
- マイクロチップ代
- ペット保険加入料
などが追加される場合もあります。
「初期費用をできるだけ抑えたい」「その分をフードや医療費、環境づくりに回したい」という人には、保護猫は経済的な面でも大きなメリットがあります。
【違い③】性格・年齢|「成猫」は性格がわかるから、ミスマッチが少ない
保護猫には、子猫もいれば成猫もいますが、実際には1歳以上の成猫の割合が高めです。「子猫から育てたい」と考える方は多いものの、実は初心者にこそおすすめなのが性格が安定した成猫です。
保護団体や預かりボランティアは、
- 人に対して甘えん坊か慎重派か
- ほかの猫・子ども・男性が平気か
- 静かな環境を好むか、にぎやかでも大丈夫か
といった性格を日々の生活の中で観察しています。そのため、「一人暮らし向き」「先住猫がいる家庭向き」など、ある程度マッチングしてもらえるのが強みです。
【違い④】健康状態|定期検診・ワクチン・ウイルス検査済みの場合も多い
保護団体によっては、
- 血液検査
- ウイルス検査(FIV・FeLV)
- 口内の状態や慢性疾患の有無
までしっかりチェックした上で譲渡しています。もちろん、持病やハンデのある子もいますが、その場合は事前に説明を受けたうえで迎えるかどうかを決められるのがポイントです。
ショップの猫も健康管理はされていますが、販売時点では軽度の症状が見抜けないこともあり、購入後に体調不良が続くケースも少なくありません。どちらにしても、迎えた後に「かかりつけの動物病院」を持ち、定期的に健康チェックをすることが大切です。
【違い⑤】受け入れまでの流れ|ショップは即日OK、保護猫は「審査と準備期間」あり
ペットショップでは、気に入った猫がいればその日のうちに契約し連れて帰ることも可能です。一方、保護猫は、
- アンケート(家族構成・住環境・飼育経験など)
- 面談(オンライン・対面)
- 場合によっては自宅訪問
- トライアル期間(1〜2週間前後)
といったステップを踏むのが一般的です。
これを「面倒」「審査されているみたいで嫌」と感じる方もいますが、保護団体側から見ると、
- 猫と人との相性を見極める
- 生活スタイルに無理がないか確認する
- 「手放さない覚悟」があるか確かめる
ための大切なプロセスです。言い換えれば、「一緒に幸せに暮らし続けるための事前ミーティング」なのです。
保護猫を選ぶ5つのメリットと2つの注意点
【保護猫を迎えるメリット チェックリスト】
□ 命を救う選択がしたい
□ 性格が分かる猫と暮らしたい
□ 初期費用を抑えたい
□ 譲渡元のサポート体制がほしい
□ 動物福祉に貢献したい
メリット① 命を救う選択ができる
1匹の保護猫を迎えるということは、その子自身の命を救うだけではありません。保護施設や預かりボランティアのスペースは限られているため、1匹が卒業すると、
- 新たな猫を保護するスペースが空く
- 医療費や保護費用の一部が次の猫のために使われる
という連鎖が生まれます。つまり、あなたの選択が「複数の命を救うきっかけ」になるのです。
メリット② 性格がわかるから失敗しにくい
保護猫は、預かりボランティア宅やシェルターである程度の期間を過ごしてから譲渡に出ることが多いです。そのため、
- 静かな環境が好き
- 遊ぶのが好きでよく走り回る
- 抱っこは苦手だけど、そばにいたいタイプ
など、性格の傾向が事前にかなりわかります。「イメージと違った」「思っていたより激しすぎた」というミスマッチが起こりにくいのは、初心者にとって大きな安心材料です。
メリット③ 経済的な負担が軽い
前述のとおり、保護猫の譲渡費用には初期医療が含まれていることが多く、ショップで迎える場合と比べて初期費用が3〜5万円ほど軽くなるケースもあります。
浮いたお金を、
- 質の良いフード
- 安全なキャットタワーやケージ
- 医療費の備え(ペット保険など)
に回せるのは、長い目で見ても猫の健康にとってプラスです。
メリット④ 保護団体・ボランティアとのつながりが心強い
保護猫を迎えた多くの人が口を揃えて言うのが、「譲渡後も相談できるのが心強い」ということです。
- ごはんを食べないときどうしたらいい?
- トイレを失敗してしまう
- 先住猫との距離感が不安
など、初心者がつまずきやすいポイントを、保護主や団体スタッフに気軽に相談できるのは大きな安心材料です。「困ったら連絡してね」と言ってくれる存在がいることは、精神的な支えにもなります。
メリット⑤ 動物福祉・社会問題への具体的な貢献になる
保護猫を迎えるという行為は、
- 殺処分ゼロを目指す活動
- 過剰繁殖の抑制
- 多頭飼育崩壊の防止
といった社会全体の課題に対する「具体的な貢献」でもあります。「何か動物のためになることをしたい」と思っていても、募金やボランティアはハードルが高い…という人にとって、保護猫を迎えることはとてもわかりやすい一歩です。
注意点① 慣れるまでに時間がかかることを前提に
保護猫の中には、過去に怖い思いをした経験から、人を強く警戒している子もいます。慎重な子だと、
- 姿を見せるまでに数日〜数週間
- 触らせてくれるまでに数か月
かかることもあります。
「せっかく迎えたのに、全然懐いてくれない…」と落ち込むのではなく、「この子が人を信用し直すためのリハビリ期間なんだ」と捉え、長い目で見守ることが大切です。
注意点② 医療ケアや通院が必要な場合もある
保護猫の中には、
- 慢性の鼻炎や口内炎
- 猫風邪の後遺症
- ウイルス陽性(FIV・FeLV)
など、継続したケアを必要とする子もいます。そうした猫は事前に説明されることがほとんどですが、
- 定期的な通院が可能か
- 医療費の負担を継続できるか
- 先住猫がいる場合の感染リスクへの理解
などをよく考えてから迎えることが大切です。
初心者が「保護猫と暮らす」前に考えるべき3つのこと
1. 家族全員の同意と協力体制を整える
トラブルの原因として非常に多いのが、「家族の温度差」です。
- お世話をする人は誰か
- 旅行や帰省のときどうするか
- 家具の傷みや抜け毛にどこまで許容できるか
など、家族であらかじめ話し合っておくことが重要です。特に、猫アレルギーの有無や、動物が苦手な家族がいないかは必ず確認しましょう。
2. 安心できる居住環境を整える
保護猫は、新しい家に来た直後は「警戒MAX」の状態です。いきなり家中を解放するのではなく、
- まずは1部屋+ケージからスタート
- 高いところ・狭いところなど「隠れ場所」をつくる
- 人が頻繁に出入りしない静かな部屋を選ぶ
といった配慮が大切です。
また、
- 落下の危険がある窓やベランダ
- 誤飲しやすい小物
- 電気コード
などは、迎える前にチェックしておきましょう。
3. 最低10年以上の「命に向き合う覚悟」を持つ
猫の平均寿命は15年前後。子猫を迎えれば、20年近く一緒に暮らす可能性もあります。
- 引っ越し
- 結婚・出産
- 転職・収入の変化
など、ライフスタイルが変わっても「手放さない」覚悟が必要です。もし将来どうしても飼えなくなったとしても、「譲渡すればいいや」と安易に考えず、「最後まで一緒にいる前提」で迎えられるかを自分に問いかけてみましょう。
初心者でもできた!保護猫との出会いとその後のリアル体験
私は猫を飼ったこともなく、どちらかというと犬派でした。犬についても飼育経験はほぼゼロ。「犬でも飼おうかな」と何気なく放った独り言からペットショップにつれていかれ、初めての美猫だっこ体験を経て、にゃタゾノとの出会いに向けて一気に加速していきました。
そして、出会って悩み、迎え入れてニオイに翻弄され、プイっと横を向かれ全身の力が抜けうなだれ落ちることも数回。
時間はかかりましたが、今では、膝を叩きながら「ぴょん!おいで」というと膝に飛び乗る、玄関先で物音がすればいち早く確認に行き、異常がなければ走ってきて”異常なし!”といわんばかりに「にゃ!」と言う、というような、オリジナルな信頼関係が築けているのではないかと考えています。
出会いは本当に大事で、自分に合っているのかどうかは、何度も様々な視点から確認することが必要だと考えています。

しっぽに不思議を感じているにゃタゾノ
まとめ|保護猫を迎えるのは「命の選択」――その意味を知ろう
保護猫を迎えることは、単に「猫を飼う」ことではありません。
- 行き場を失った命に、もう一度チャンスを与えること
- 自分の生活スタイルを見直し、「命と暮らす覚悟」を持つこと
- 社会全体の動物福祉に、小さくても確かな一歩を踏み出すこと
でもそれは決して、重たい使命感だけの世界ではありません。実際に暮らしてみると、
- 毎日の何気ない仕草に癒される
- 「ごはんまだ?」の催促が楽しみになる
- 疲れて帰ったときに、そっとそばにいてくれる存在になる
という、かけがえのない喜びが待っています。
「保護猫ってどうなんだろう?」と迷っているなら、まずは譲渡会や保護猫カフェに足を運んでみてください。写真だけではわからない、その子のまなざしや体温を感じることで、きっと何かが変わり始めます。
参考情報・注意事項
- 環境省「犬猫の引取り及び負傷動物の収容状況」(令和4年度)
- 公益社団法人 日本動物福祉協会
- 保護団体・シェルター(ねこけん、ペットのおうち、保護猫カフェ など)
※医療内容・譲渡条件・費用は、保護団体や自治体によって異なります。最新の情報は必ず各団体の公式サイトや問い合わせ窓口で確認してくださいね。


コメント