保護猫を迎えたばかりの1週間は、
- 隠れたまま出てこない
- まったく懐かない
- ごはんを食べたり食べなかったり
- 夜になると鳴き続ける
など、「思っていたのと違う…」と感じる出来事の連続かもしれません。
でも実は、こうした不安や戸惑いはほとんどの飼い主さんが経験する“通過儀礼”のようなものです。猫にとっても、
- 家が安全だとわかるまでの時間
- 人の生活リズムを理解する時間
が必要なのです。
この記事では、
- 最初の1週間に起こりやすいトラブルとその理由
- 「やってはいけない対応」と「してあげたい対応」
- 1週間を乗り越えるための具体的な7つの対策
- 受診の目安と相談先
- 実際の体験談
を、専門家の知見を交えながらわかりやすくお伝えします。
初日〜3日目に起きやすい「3大不安行動」とは?
① ずっと隠れて出てこない(ほぼ100%の猫が経験)
初日からケージの奥やベッドの下に籠もったまま、まったく姿を見せない…。これは、保護猫ではほぼ“標準装備”の反応です。
保護主のデータによると、90%以上の保護猫が最初の3日間は「隠れたまま」過ごすとされています。特に、
- これまで外で暮らしていた猫
- 多頭飼育崩壊の現場からレスキューされた猫
- 人から怖い思いを受けた経験がある猫
ほど、慎重になりやすい傾向があります。
この時期に大切なのは、
- 無理に引っ張り出さない
- 隠れ場所に手を突っ込まない
- 「出てこない=失敗」と考えない
ことです。隠れているということは、「自分で安全な場所を選べている」証拠でもあります。
② ご飯を食べない・水を飲まない(ストレスでよくある反応)
新しい環境になると、猫の体はストレスモードに入り、消化機能が一時的に落ちます。そのため、
- 初日はほとんど食べない
- 2日目に少しだけ口をつける
- 3日目以降、徐々に食べる量が増える
というパターンは非常によく見られます。
目安としては、
- 48〜72時間以内に少しでも食べていれば、まずは様子見
- 水もまったく飲まない状態が続く場合は要注意
です。ウェットフードや匂いの強いごはんを少量だけ出し、部屋を暗めにしてそっとしておくと、「人がいない隙にこっそり食べていた」ということも多いです。
③ トイレの失敗・トイレに行かない
トイレに関するトラブルも、最初の1週間でとても多い相談です。
- トイレにまったく行かない
- 布団やカーペットでしてしまう
- トイレの中でうずくまって出てこない
など、パターンは様々ですが、原因として多いのは、
- 砂の種類が変わって戸惑っている
- トイレの位置が落ち着かない(人通りが多いなど)
- トイレが1つしかなく、猫が安心できない
といった環境要因です。
できれば、
- 譲渡元で使っていた砂と同じものを用意する
- 部屋の隅など、静かで見通しの良い場所に置く
- 最初は2つ設置して、好きな方を選ばせる
と、成功率がぐっと上がります。
4日目〜7日目に起きがちな「初心者の誤解と焦り」
「鳴かない=元気じゃない?」と勘違いしてしまう
よく、「全然鳴かないから、元気がないのかも」と心配する声を聞きますが、実は「まだ本音を出せていない」だけということも多いです。
猫の性格や過去の経験によっては、
- 不安が強いほど静かになる
- 怖いときほど固まって動けなくなる
という子もいます。「鳴かないから安心」「鳴くから不安」という単純な判断ではなく、
- 食欲・排泄が保たれているか
- 呼吸や歩き方に異常はないか
- 表情や耳の動きに変化はないか
といった全体の様子を見てあげましょう。
「撫でさせてくれた=懐いた」はまだ“仮免許”の段階
初めて撫でさせてくれたとき、飼い主さんの喜びはひとしおです。でも、動物行動学の視点から見ると、
「触らせてくれた」=「100%信頼している」ではない
ことも多いです。特に、
- おやつにつられて近づいてきた
- 逃げるほどのエネルギーがないほど緊張している
という場合、「本当に安心しきっている」とは言えません。
大切なのは、
- 撫でたときに耳や尻尾がどう動いているか
- 自分からスリスリしてくるか
- 終わりにしたそうなサイン(体をそむけるなど)を見逃さない
ことです。「触れるようになったからゴール」ではなく、「ここから信頼を育てていくスタート」だと考えましょう。
「遊ばない=つまらない」ではなく、環境に慣れるのが最優先
おもちゃを用意しても興味を示さないと、「うちの子、つまらなそう…」と不安になるかもしれません。しかし、最初の1週間は、
遊ぶよりも「安全かどうか」を確認する方が優先順位が高い
時期です。
ケージの周りを少し歩くだけでも、猫にとっては大冒険。おもちゃで遊ばないのは、「つまらない」のではなく、心の余裕がまだないだけと考えてOKです。
1週間を乗り越えるための安心対策7選
1. 決まった時間に声をかける(安心ルーティン化)
毎日同じ時間に、
- 「おはよう」
- 「ごはんだよ」
- 「おやすみ」
といった声かけを続けることで、猫は少しずつ「この人の生活リズム」を理解していきます。
ルーティンができると、
- ごはんの前後に姿を見せるようになる
- 夜の時間帯に落ち着いて眠るようになる
など、行動が安定しやすくなります。
2. ごはんの置き場所やトイレを変えない
初心者さんがやりがちなのが、「もっと良い場所があるかも」と頻繁に配置を変えてしまうことです。しかし猫にとって、
「昨日と同じ場所に、同じものがある」
ことは安心感につながります。
- 1週間は基本的に配置を変えない
- どうしても変える場合は、元の場所と新しい場所をしばらく併用する
といった工夫をしましょう。
3. 猫よりも“下”の姿勢を意識する
立ち上がって見下ろすと、猫から見ると「大型の捕食者」のように見えることがあります。
- 床に座る・寝転ぶ
- テーブルなどに肘をついて、姿勢を低く保つ
など、自分の体をできるだけ低くして過ごすと、猫は「この人は威圧してこない」と感じやすくなります。
4. 変化を日記に残す(初心者ほどおすすめ)
1週間はあっという間ですが、毎日の変化をメモしておくと、
- 「3日目に初めてごはんを完食した」
- 「5日目にトイレを成功した」
- 「7日目にそばまで来てくれた」
など、小さな成長がよくわかります。
落ち込んだときに見返すと、「ちゃんと前に進んでいる」と実感できて、飼い主さん自身の気持ちの安定にもつながります。
5. フェロモンスプレーなどの安心アイテムを活用
Feliwayなどの猫用フェロモン製剤は、母猫が子猫を安心させるときに出す匂いを再現したものです。研究では、
- 不安行動が15〜30%ほど減った
- 隠れっぱなしの時間が徐々に短くなった
といった報告もあります。絶対の効果ではありませんが、
- 「できる対策をすべてしてあげたい」
- 「どうしても怖がりな子で心配」
という場合の、補助的なアイテムとして検討してもよいでしょう。
6. 団体・保護主に気軽に相談する
「この行動は普通ですか?」と聞くだけでも、気持ちがぐっと軽くなります。保護主や団体は、その子の性格や過去の経緯をよく知っているプロです。
- いつ頃からごはんを食べ始める子が多いか
- この子は慎重派か、好奇心旺盛か
- 似た性格の子の例
など、具体的なアドバイスがもらえるはずです。
7. 病院に行くべきタイミングを把握する
「様子を見る」と「受診する」の境目は、初心者さんには分かりにくいものです。目安としては、
- 72時間以上まったく食べない・飲まない
- 下痢や嘔吐が続く
- 呼吸が速い・苦しそう
- 明らかにぐったりしている
といった症状がある場合は、早めの受診をおすすめします。とくに子猫や高齢猫は、脱水が命にかかわることもあるため注意が必要です。
にゃタゾノの変化のリアル体験談|1週間でここまで変わる
一番最初
およそ2週間後
約1か月後
片手に乗るサイズだったのが1か月でグイっと成長します。このころはまだ白猫の雰囲気でしたが、今は下の画像のように、鯖トラ柄がしっかり出てきています。こんなに変わったら違う猫だと思ってしまいますね。
現在のにゃタゾノ
人間の赤ちゃんも生まれて1か月で2倍に成長しますが、猫の成長スピードもとても速いので、もし、今不安に思えていても1か月先は全く世界が変わっていることになりますから、心配はいらない、とお伝えしたいです。
まとめ|最初の1週間は「不安」から「安心」に変わる時間
保護猫の最初の1週間は、
- 猫にとっては「生きていける場所かどうか」を見極める期間
- 飼い主にとっては「待つこと・見守ること」を学ぶ期間
でもあります。
この時期は、
- 環境をころころ変えない
- 期待しすぎず、小さな変化を喜ぶ
- 一人で抱え込まず、相談する
という3つを意識するだけで、ずいぶん心が楽になります。
焦らず、その子のペースで。1週間後、1ヶ月後、半年後…。振り返ったとき、「あの頃はこんなことで悩んでいたな」と笑える日が必ず来ます。
参考情報・注意事項
- 環境省「動物の適正飼養指針」
- 日本動物福祉協会 調査資料
- 海外動物行動学会(IAABC)などの論文・ガイドライン
※72時間以上の食欲不振・水分摂取の欠如、持続する下痢や嘔吐、極端な攻撃行動や呼吸困難などは、早急な受診が必要です。迷ったときは「大丈夫かな?」と悩むより、かかりつけ医や譲渡元にご相談することをおすすめします。


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