まず知っておきたい「避妊・去勢手術が保護猫にもたらす安心」
保護猫を家族として迎えた初心者がまず抱える不安のひとつが、「避妊や去勢は本当に必要?」という疑問です。
実は獣医師のあいだでは、手術は単なる“繁殖防止”ではなく、長く健康に暮らすための重要な医療ケアとして位置づけられています。
さらに保護猫の場合、外での生活が長かった子も多く、ホルモンバランスやストレスの影響を受けやすい傾向があります。そのため、手術による行動の安定や健康リスクの軽減は、家庭での暮らしに馴染むうえで大きな助けになるのです。
健康と行動に与えるメリットを知ると安心できる
● 病気のリスクを大きく減らす
日本獣医師会によると、避妊・去勢手術は以下の病気を大幅に減らすと報告されています。
- メス:子宮蓄膿症、乳腺腫瘍(特に初回発情前の手術は効果大)
- オス:精巣腫瘍、前立腺疾患、マーキング癖の軽減
これらは放置すると命に関わる病気も多く、日常の健康管理において手術は非常に大きな予防効果を持ちます。
● 性格が安定しやすくなる
発情期の猫は、鳴く・落ち着かない・外へ出たがるなどの行動が増えます。手術によりホルモン変動が落ち着くことで、
家庭内で穏やかに暮らせるようになるケースが多いと獣医師は述べています。
● “不幸な命を増やさない”という社会的な意義
保護猫の世界では「避妊・去勢は命を守る行動」という考え方が定着しています。
地域猫活動などでも、手術が命を救う大きな柱として扱われています。
いつ受ける?獣医師が推奨する最適なタイミング
● 生後6か月前後が基本の目安
多くの動物病院は、生後5〜7か月の間を手術適齢期として推奨しています。
初回発情前に手術することで、ホルモン影響を最小限にし、術後の回復も早くなります。
● 成猫でも手術は可能
「成猫だけど遅い?」と心配する人もいますが、健康状態に問題がなければ大人の猫でも手術は可能です。
ただし獣医師は、以下の事前チェックを推奨しています。
- 血液検査(腎臓・肝臓の状態を確認)
- 感染症(FIV・FeLV)の有無
- 体重・麻酔リスクの確認
● 手術前に準備したい3つのポイント
- 前夜からの絶食・絶水(病院の指示に従う)
- ワクチン接種が済んでいるかチェック
- 術後は静かに休める個室を準備しておく

避妊手術後で疲れ果て寝ているにゃタゾノ
“手術当日はどうなる?” 初めてでも安心の流れ
● 当日の一般的なながれ
- 朝:絶食状態で病院へ
- 午前:麻酔前検査(血液検査・体温・体重)
- 昼頃:麻酔→手術(30〜60分)
- 夕方:麻酔覚醒後に退院 or 一泊入院
● 費用の目安と助成制度
| 手術内容 | 平均費用 | 助成あり |
|---|---|---|
| メス避妊 | 15,000〜30,000円 | 5,000〜10,000円前後 |
| オス去勢 | 10,000〜20,000円 | 3,000〜8,000円前後 |
どうぶつ基金の無料チケットや自治体の助成金を利用すると、費用負担は大幅に軽減されます。
保護猫を迎えた人は、まず自治体サイトを確認するのがおすすめです。
“術後の不安”を安心に変えるケアのポイント
● 食事と水分の与え方
術後は食欲が落ちる場合があります。無理をさせず、
・少量のウェットフード
・常温の水
など負担の少ない食事から始めましょう。
● エリザベスカラーを嫌がる場合の対策
猫がストレスを感じやすいため、獣医師は軽量タイプ・布タイプも推奨しています。
「傷口を舐めない」が最優先のため、嫌がる場合も外さないよう注意します。
最近ではポンデリングのような可愛い襟巻状のものや、傷口を保護する意味で術後服というものもあります。
● 毎日チェックしたいポイント
- 出血・腫れはないか
- 食欲・元気が極端に落ちていないか
- 排泄がいつも通りか
特に元気がない状態が24時間続く場合は、獣医師に相談しましょう。

獣医さんに抱っこされているにゃタゾノの術後のおなか
体験談:筆者の保護猫「にゃタゾノ」が手術を乗り越えた日
にゃタゾノの避妊手術は、生後9か月のときに行いました。
避妊手術をさせるかどうかを検討しているうちに発情が始まり、「猫は100%妊娠する」こと、また「子宮系の病気になりやすい」ということから獣医師からの勧めもあり手術を決断しました。
手術にあたり、事前に不明な点がないようにはしていましたが、やはり不安な気持ちと、健康なのに大切な体の一部を取り出すことを、当の本人ではなく人間が決めてよいのか、ということから罪悪感がぬぐえなかったのを覚えています。

避妊手術からの帰宅後、膝の上から動かず。
無事に手術を終えたにゃタゾノは、予想していたよりも元気でしたし、獣医師から動画に撮らせていただきながらご説明をいただけて、安心しましたが、帰宅後に痛みのためかおしっこが出せず、すぐに緊急で病院へ戻る、ということになりました。
猫の成長スピードは人間の約4~6倍で、1歳で人間の17~18歳に相当するとされ、大きくなるほど手術時の負荷は大きくなります。このことからも、手術する、しないの判断やいつ実施するかといったことは、猫を飼う以前にも、家族間でよく話し合って決めておく方がよいでしょう。
その後、1日1日の時間経過とともに驚くほどの回復力をみせ、あっという間に普段通りになりました。

術後服で遊ぶにゃタゾノ
7. まとめ|不安より“安心の未来”を選ぶために
避妊・去勢手術は、保護猫にとって
長く健康に、安全に暮らすための大切なケア
です。
- 病気リスクを減らす
- 行動が安定しやすくなる
- 家庭で安心して暮らせるようになる
初心者でも、ポイントさえ押さえれば大丈夫。
あなたの少しの準備が、猫の大きな“安心”につながります。
【参考文献】
- 日本獣医師会「避妊・去勢Q&A」
- どうぶつ基金 公式サイト
- ペット保険比較サイト「保険スクエアbang!」
- 獣医行動学テキスト(麻酔・術後ケアの基礎)


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